ちよ先輩のてのひらの上。
今までも、これからも
「どーぞ」
そう言って招き入れられたのはリビングではなく、2階のちよ先輩の部屋だった。
今の時間、お家の人はみんな留守にしているらしい。
私はカチコチになりながら足を踏み入れた。
「緊張してる?」
おかしそうに尋ねられて、唇をキュッと結んだ。
……緊張しないわけ、ない。
だって……好きな人の部屋で、好きな人とふたりきりなんだよ。逆にどうしてそんなに普通にしていられるのかが、わかんないよ。
こっそりとふてくされていると、荷物を下ろしたちよ先輩が近づいてくる。
「……そんなに意識してもらえると、嬉しいね」
「ひゃあっ」
強く手を引かれて、ポスッ、とお尻をついた。
私を受け止めたのは、ベッドの柔らかな感触。
「ねえ、ひなちゃん。もっと俺の名前、呼んでよ」
「先輩……、あの」
バクバクバクと尋常じゃないほどに暴れている心臓に、生理的に涙が出そうになる。
「お願い」
甘えるような声に、ぞくりと胸の内側を震えが走った。