ちよ先輩のてのひらの上。
「……あおい、先輩」
絞り出すように呼ぶと、先輩は眼鏡を外して、テーブルの上に置いた。
その仕草に、——思わず唇をすり合わせる。
先輩が私の頬を包み込み、満面の笑みを浮かべながら、顔を寄せてきた。
「もっと」
触れそうで触れないギリギリの位置まで近づいて、囁かれる。
頭の中が、じんわり痺れて——。
「……っ」
そっと掠めるように、唇が触れた。
けれどすぐに離れ、ちよ先輩が再び囁いた。
「ほら、はやく」
「……っ。蒼、せんぱ……っ」
応えるように開いた唇。
けれど、私の声はまんまとちよ先輩に飲み込まれてしまった。
埋まった距離と、差し込まれた温かくて柔らかい感触に、無意識に声にならない吐息を漏らす。
かき回すような甘くて優しいその動きに、とろとろに溶かされるような感覚が襲って。
私の頭は次第に、真っ白になっていった——。