ちよ先輩のてのひらの上。
「俺もさ、ひなちゃんが初恋なんだ」
「え——」
私は大きく目を見開いた。
今、なんて言ったの?
聞こえた言葉が、耳に甘い余韻を残していく。
けれど、すぐに空気に紛れてしまったそれに、幻聴かもしれないと不安を感じた。
それくらい、嬉しいものだった。
「綺麗な涙を流しながら、小さな手で俺を握ってさ。後ろをついてくるひなちゃんが、可愛いくて……守ってあげたくて……。そんな風に思ってたところに、お兄ちゃんだったら、なんて言われたら……。そんなの、好きになっちゃうでしょ」
先輩の素直な言葉に、たちまち顔が熱くなる。
「あの後も、何度か公園に行ったんだけど。会えなくて……。その内、テニスをやめたら、あの公園で練習することもなくなっちゃったから。もう、会えないと思ってたんだ」
後頭部に、そっと手のひらが添えられて。
撫でるように私の髪に触れながら、ちよ先輩が目を細めた。