ちよ先輩のてのひらの上。


「ずっと、——ひなちゃんのこと、忘れられなかった」


告げられた言葉が、私を満たすように心の中に広がっていく。


「ずっと、好きだった」


吐息混じりにそう言ったちよ先輩の顔が、再び近づいて——。


「ちょ、ちょっと待ってください」

「……む」


咄嗟に唇の前に手をかざすと、先輩がそこにぶつかった。


「でも、……ちよ先輩、今までに付き合った女の子がいるって……」

「……それは」


先輩が、微かにたじろいだ。私は、ム、と眉を寄せる。


「今、……嘘つきましたね?」


息を吐くように嘘をつくって、……お兄ちゃんが言ってた。

それに……ちよ先輩についての噂は、今までにも何度か聞いてきたんだ。

女の子と色々あったような、そんな話を。


「……待って。違うよ」

「……」

「付き合ってたって言っても、……今思えば、気持ちは追いついてなかったというか」


探るような目を向けると、先輩が困ったように眉を下げた。

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