ちよ先輩のてのひらの上。
「……あんまり、言いたくないんだけど。ちょっとでもいいなと思えた子とだったら、人並みに恋愛を楽しんでたみたいなところは、あるよ。それに、つい最近まで、ひなちゃんのことはもうほとんど思い出になってると思ってたから」
珍しく、焦燥感を含んだ声。
「けど、そらと知り合って、家が近所だってわかったら、よく考えたら小学生の頃にたまに遊んだことあったかも、って話になってさ。そこから、そらがひなちゃんのお兄ちゃんだってことに気がついて」
ふたりの間に隔てた私の手を、ちよ先輩がキュ、と握った。
「……また会えるんだって思ったら、止まってた気持ちが動き出すみたいだった。……全然思い出になんかなってないって、思い知ったんだ」
「……本当、ですか?」
「本当だよ。それからは、もう、ひなちゃんのことしか考えられなかった」
ゆっくりと、手を下される。
「自分でもびっくりしたよ」
「……先輩……」
「俺の気持ちは、ずっと、ひなちゃんにあったんだ。……ね、信じて」
「……んっ」
今度こそ、触れ合った唇。
何度も繰り返し与えらる感触が、だんだんと、深くなっていって……。