ちよ先輩のてのひらの上。


そ、そうは言ってないですっ……!

思わず心の中で叫びながら、先輩に抗議の目を向ける。


「昼休みは、もっと俺に触れられたいって思ってくれたんだよね?」


訊かれて、私は言葉に詰まってしまった。


……あのときは、なんとかちよ先輩に近づきたくて……。自分でも驚くほど、大胆になれた。

でも、今は……。

ちよ先輩のことを好きだって自覚して。ちよ先輩がアオイくんだとわかって。

……溢れ出す感情が強すぎて、心臓が痛いくらいにいっぱいいっぱいなんだ。


「……やっぱり少し、思うところがあるのかな」


何も言わない私を見て、先輩が苦しそうに眉をひそめた。

……ちよ先輩?


「裏で企むような真似してた俺に、がっかりした?」


どこか寂しそうに、


「それとも、紺野とのことがあって、……俺のことも、少し怖くなった?」


不安げに揺れる先輩の瞳。

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