ちよ先輩のてのひらの上。
「誰にも、渡したくない」
先輩が、切なげに呟いた。
「……はやく、俺のもになってよ」
甘い響きを帯びた声を落としながら、先輩の顔が再び首筋にうずめられた。
触れられている箇所がじんじんと疼き、ぎゅっと目を瞑って耐える。
やがて、チクリとした痛みを感じて、私は弱々しく声を上げた。
「……ひなちゃん、熱いね」
くすりと洩れた吐息が、私の肌をくすぐる。
閉じていた目を開ければ、すぐ傍には、いつもと同じ先輩の微笑み。
あ……よかった。
どうやら、不安を取り除くことができたみたい。
ホッと安心したのも、束の間。
「すごく真っ赤になってる」
からかわれるように言われて、ますます体が熱くなってしまう。
も、もう……。さっきまでの可愛いちよ先輩は、どこにいっちゃったんだろう。
顔を隠すように、手を動かそうとしたけれど。
「こーら。隠さないの」
両手とも、しっかりとちよ先輩に捕らえられてしまった。
ベッドに縫いとめられるように押さえつけられ、何度も啄むように、唇を塞がれて。
「ねえ、ひなちゃん」
ぼうっとしてきた頭に、ちよ先輩の声が響いた。