ちよ先輩のてのひらの上。


「……どうしても、ダメ?」


まるで誘惑するよう声色に、心が揺さぶられる。答えられず、目を泳がせた。


「……ほんとは、ダメだって思ってないよね」


先輩の言葉に、ドキン、と心臓が跳ねた。


「ひなちゃん。教えてよ」

「先輩……」

「……ほんとは俺に、どうされたい?」


ちよ先輩を見上げる視界が、涙と熱で、ぼやけていく。


……また、だ。

先輩は、いつもこうやって……。私の気持ちを見透かして。

その上で、聞き出そうとするんだ。

先輩は優しいけど、やっぱりときどき意地悪だよね。


悔しさを感じて、唇を結んでいたけれど、


「ほら、言ってみて?……いい子だから」


掠れた声で、そう囁かれてしまえば。

キュ、と力を込めていた口元から、だんだんと力が抜けていってしまう。


——敵わない。

私、ちよ先輩に弱すぎるよ。

先輩の言葉に、笑顔に、いつだって振り回される。

写真のことだって、初恋のことだって、全然気づかなかったんだから。

お兄ちゃんには、大丈夫かって心配されちゃったけど、……全然、大丈夫じゃなさそうだよ。

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