ちよ先輩のてのひらの上。
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透き通るようなその瞳を向けられるだけで、なぜだか心臓の動きは硬くなる。
こちらに向けられていたちよ先輩の視線が、手元のお兄ちゃんのスマホへと移動した。
その小さな機械を通しても、見られているという意識が私をくすぐったくさせる。
「そら。もうちょっと右にずれて。文字見えない」
校門の前で隣に並ぶお兄ちゃんが、じり、と私から離れた。隠れていた『入学式』と書かれた看板が、姿を現わす。
「ここ?」
「……うん。いい感じ」
「はい、ちーず」という形式ばった掛け声に、お兄ちゃんが指でブイの字を作った。
私もそれにつられて、慌てて手を顔の横に持ってくる。
ほぼ同時に、スマホがカシャ、という音を立てた。