ちよ先輩のてのひらの上。



***



透き通るようなその瞳を向けられるだけで、なぜだか心臓の動きは硬くなる。

こちらに向けられていたちよ先輩の視線が、手元のお兄ちゃんのスマホへと移動した。

その小さな機械を通しても、見られているという意識が私をくすぐったくさせる。


「そら。もうちょっと右にずれて。文字見えない」


校門の前で隣に並ぶお兄ちゃんが、じり、と私から離れた。隠れていた『入学式』と書かれた看板が、姿を現わす。


「ここ?」

「……うん。いい感じ」


「はい、ちーず」という形式ばった掛け声に、お兄ちゃんが指でブイの字を作った。

私もそれにつられて、慌てて手を顔の横に持ってくる。

ほぼ同時に、スマホがカシャ、という音を立てた。


< 23 / 225 >

この作品をシェア

pagetop