ちよ先輩のてのひらの上。
「はい、完璧」
満足げに画面を眺めたちよ先輩が、お兄ちゃんにスマホを手渡した。
「どれどれ……あっ、画面消すなよ」
「ああ。ごめん」
先輩は、おもむろに腕時計に視線を落とした。
「……そろそろ、バス、来ちゃうんじゃない?」
聞かれて、私も自分のスマホで時間を確認し、頷いた。
「行こっか」
私に微笑み、歩き出すちよ先輩。
お兄ちゃんを置いて、私もその斜め後ろに続いた。
……少しすると、先を歩いていたはずの先輩は速度を落とし、私の隣に並んでいた。
それに気づいてしまった途端、頭がぐるぐると忙しなく回り出す。
その中から、やっとの思いで見つけた話題を、私は勇気を出して声にした。
「……先輩も、同じ方向なんですか?」
「うん。途中までだけどね」