ちよ先輩のてのひらの上。


「……そうなんですね」


つい嬉しい気持ちが声に混ざって、外へとこぼれてしまった。

パッと口に蓋をして、隣を盗み見る。ちよ先輩の優しげな視線とぶつかった。


「ひなちゃんたちの降りるふたつ前が、俺の降りるとこ」

「……じゃあ、近いんですね」

「そうだね。よかったら今度、遊びに来てよ」

「……え」


ひときわ大きく、心臓が跳ね上がった。


……先輩の家に?
男の、人の……。

普段から男の子と遊ぶ機会なんて全くない私には、それはとてもハードルが高いお誘いだった。

ドキドキと強く打ちつける鼓動をそのままに、返事も忘れて、ちよ先輩を見つめ返す。


「……あれ。ごめん、嫌だった?そらは何度も来てるんだけど」

「……あっ、いえ、その……っ」

「まあでも、あんな様子じゃあ、そらがひなちゃんを連れて来てくれないか」


先輩は肩を竦めて苦笑する。

その言葉を聞いて、暴れていた私の心臓が、ふっと落ち着きを取り戻した。

< 25 / 225 >

この作品をシェア

pagetop