ちよ先輩のてのひらの上。
「……そうなんですね」
つい嬉しい気持ちが声に混ざって、外へとこぼれてしまった。
パッと口に蓋をして、隣を盗み見る。ちよ先輩の優しげな視線とぶつかった。
「ひなちゃんたちの降りるふたつ前が、俺の降りるとこ」
「……じゃあ、近いんですね」
「そうだね。よかったら今度、遊びに来てよ」
「……え」
ひときわ大きく、心臓が跳ね上がった。
……先輩の家に?
男の、人の……。
普段から男の子と遊ぶ機会なんて全くない私には、それはとてもハードルが高いお誘いだった。
ドキドキと強く打ちつける鼓動をそのままに、返事も忘れて、ちよ先輩を見つめ返す。
「……あれ。ごめん、嫌だった?そらは何度も来てるんだけど」
「……あっ、いえ、その……っ」
「まあでも、あんな様子じゃあ、そらがひなちゃんを連れて来てくれないか」
先輩は肩を竦めて苦笑する。
その言葉を聞いて、暴れていた私の心臓が、ふっと落ち着きを取り戻した。