ちよ先輩のてのひらの上。
「ちよ……てめえっ。やりやがったな」
「なにを」
「写真っ。ほとんど俺しか写ってねーじゃねえか!」
「あれ、そうだった?」
「ふざけんな!わざとだろーが!」
「ちょ、……いたたたっ」
ちよ先輩に飛びついて、お兄ちゃんがヘッドロックをかける。
「俺の入学式みたいになってるだろ!」
「いいじゃん。いい顔してるって」
「うるせえっ。俺の思い出を返せっ」
「いたたっ。ごめんて——ほら、バス、来るからっ」
楽しそうに笑いながら、先輩がお兄ちゃんの腕からするりと逃れた。そのまま私の手を取って、走り出す。
引っ張られるままに、私も駆け出していた。