ちよ先輩のてのひらの上。
短い横断歩道を渡り、川沿いの歩道へと移る。
私たちとお兄ちゃんを遮るように、車が一台、通り過ぎた。
「……こら、ちよ!ひなたに触んなって!」
後ろから、お兄ちゃんの声が追いかけて来る。それに捕まらないように、私たちは走った。
先輩が、ちらりと振り返る。
「ひなちゃん。過保護なお兄ちゃんを持っちゃって、大変だね」
ペロ、といたずらっ子のように舌を見せた先輩の表情は、——さきほど感じた大人っぽさが嘘のように、あまりにも無邪気だった。
先輩の背中を視界に入れたまま、私は風を受け止める。
息を弾ませながら、右手に流れる川へと、目を向けた。
どこまでも一緒になってついて来る水面は、私の心の中を映し出すように、日の光を受け、キラキラと輝いていた。