ちよ先輩のてのひらの上。
お兄ちゃんの妹
入学式の日、お兄ちゃんが私に声をかけたことから、私が妹であることは瞬く間に学校中に知れ渡った。
平穏な高校生活が遠のいて、もうすぐ1週間が経とうとしている。
「結城さん。なんか呼ばれてるよ」
廊下側の、ドアに一番近い席の男の子が私を呼んだ。
教室で真白ちゃんとお弁当を広げていた私は、お箸を置いて席を立った。
廊下で待っていたのは、ふたり組の女子生徒だった。上履きの色から、彼女たちが2年生であることがわかる。
「ひなたちゃんだよね。そら先輩の、妹の」
「……はい」
頷くと、私に尋ねたひとりが、もうひとりを肘で突いた。
「あの、……」
私に用があったのは、黙っていたほうの先輩みたいだ。
モジモジした様子で、紙袋をこちらへ差し出した。