ちよ先輩のてのひらの上。
「これ、……春休みに、旅行に行って……。それの、お土産なんです。そら先輩に、渡してくれませんか」
「この子、せっかく買ったのに、直接渡すのは恥ずかしいんだって。悪いけど、お願いしてもいいかな?」
聞かれて、私は内心、深くため息をついていた。
こういう場合の返事は、どうせひとつしか残されていない。
「……はい、わかりました」
「ありがとーっ。よろしくね」
紙袋を受け取ると、先輩たちはこちらに背を向け、階段へと駆けていく。
「頑張ったねー」と背中を叩き合い、キャッキャと楽しそうな声が、廊下の向こうへと消えていった。
……せっかく買ったなら、自分で渡したほうがお兄ちゃんも喜ぶのに……。
私なんかに頼んだら、先輩の気持ちが勿体無いと思ってしまうのは、薄情な感想なのだろうか。