ちよ先輩のてのひらの上。
……やっぱり、男の子ってちょっと怖い……。
少しへこみながら、歩き出そうとすると、
「そろそろ結城さんも、お前に呼ばれるのにうんざりしてると思うけどね」
「はあ?ひでーっ」
そんなことないよな?と振り返られ、私は咄嗟に頷いてしまった。
「ほら。俺に呼ばれんの嬉しいって」
「そうは言ってないだろ」
再び、ケラケラと笑い声が上がった。
……あ、よかった……。
ピリピリしていた雰囲気が、一気に柔らかくなった。
おずおずと視線を向けると、——助け舟を出してくれた紺野くんも、ちょうどこちらを見ていた。
紺野くんは、中学でも同じクラスだった男の子だ。
クラスの男子からの当たりが強くなった私に対しても、唯一、普通に接してくれていた。そして今のように、さりげなく助けてくれることもあった。
紺野くんに向かってありがとう、と口だけを動かしてみせると、優しげな笑顔が返された。