ちよ先輩のてのひらの上。
「ひなちゃんは、もう帰るの?」
「はい」
「そっか。……じゃあ、バス停まで送ってくよ」
「……えっ。そんな、大丈夫です」
「いいから、いいから。みんな集まるまで、暇なんだ」
ちよ先輩は時間を確認しながら荷物を下ろすと、お兄ちゃんに視線を向ける。
「……いいよね、そら」
有無を言わせないような先輩の雰囲気に、お兄ちゃんがぐ、と言葉を飲み込んだ。
「……さっさと戻ってこいよ」
「わかってるって。……ほら、行こ、ひなちゃん」
先輩がドアを開けてくれる。
私は小さくお礼を言ってから、お兄ちゃんにバイバイ、と声をかけた。