ちよ先輩のてのひらの上。
「……どうして、ですか?」
私の声に振り返った先輩の髪が、そよそよと揺れた。
心地よい風が、続いて私へ、爽やかに吹いてくる。
「……どうしてだと思う?」
そう言った先輩の笑顔は、ちょっと口を斜めに結んだ、……イジワルなものだった。
……そんなこと、言われたって……。
わかんないよ。
ちよ先輩は、一瞬、私の後ろに視線を走らせてから、もう一度わたしを見た。
「ほら、おいで」
「……」
「バス、来ちゃうよ」
「……はい」
私は気を取り直して、先輩の隣へと並んだ。
……どうして、なんて。
ちよ先輩の考えていることは、私にはわかりっこないけど……。
優しくしてくれるのは、……私が、お兄ちゃんの妹だからという理由じゃなかったらいいな、と思う。
……その綺麗な瞳に映り込んでいる私が、『結城そらの妹』ではなく、ちゃんと『結城ひなた』で、ありますように。