ちよ先輩のてのひらの上。
不穏の訪れ
——思えば、貧乏くじだらけの人生だった。
私はそれを、優秀なお兄ちゃんの妹であることを理由に、仕方ないと割り切ることにしていた。
どうしてこうなっちゃうの、とは思っても、その『どうして』を考えることから、……無意識に、目を背けていたのかもしれない。
バスと歩道の段差を、ぴょんっと降りる。そのまま勢いを殺さずに、私はバタバタと足を動かした。
「ギリギリ間に合いそうだな」
「も……っ、お兄ちゃんが洗面所、占領してたせいだからね」
「いーや。お前の寝癖が頑固だからだろ」
「ちがーうっ」
息を弾ませながらお兄ちゃんと小競り合いをする。人けのない中庭を駆け抜け、なんとか昇降口にたどり着いた。
時間を確認すると、チャイムが鳴る数分前だった。