ちよ先輩のてのひらの上。
肩を上下させて、自分のロッカーに手をついたところで、背後で同じように息を整えているお兄ちゃんに気がついた。
「……ちょっと。なんでこっちにいるの」
3年生の昇降口は、もっと奥のはずだ。
「げっ。間違えた。……お前につられて、つい」
「おバカ……」
お兄ちゃんに冷めた目つきをお見舞いして、乱暴にロッカーを開ける。
扉の動きについてくるようにして、パサ、と中から何かが飛び出した。
「あれ」
思わず声がこぼれる。
私のロッカーから出てきたのは、覚えのない1封の封筒だった。
……なんだろう、これ……。
足元に落ちたそれを拾い上げ、表、裏、と確認する。
てっきり、誰かがこの手紙を入れたものだと思ったのだけれど、宛名もなければ、……差出人の名前すらもどこにも見当たらなかった。