ちよ先輩のてのひらの上。


「……ちよ先輩は、触っていいんすね」


私と同じことを思ったのか、安川先輩が声をこぼした。


「もしかして、許可がでたんですか?」


続いて、横田先輩が興味津々な様子で尋ねる。


「……まあね」


ちよ先輩は、少し含みをもたせた返事をした。


「え……まさか」

「ひなたちゃん、早速ちよ先輩の彼女に……?」


——かのじょ。

その響きに、私の心臓がドキリと大げさに反応した。

……いや、いやいや。
彼女じゃ、ないもん。

落ち着こう、私の心臓……。


バクバクと激しく打ちつけているその動きを、なんとか落ち着かせようとしていたけれど。

次にちよ先輩の口から飛び出した言葉に、うっかり破裂してしまうところだった。


「そうだったらよかったんだけど。残念ながら違うよ」


楽しそうに顔をほころばせたちよ先輩は、


「そうだな……。俺は、ひなちゃんの『ボディーガード』ってところかな」


安川先輩たちにそう言い残し、私の手を引きながらその場を後にした。

< 61 / 225 >

この作品をシェア

pagetop