ちよ先輩のてのひらの上。
「……ちよ先輩は、触っていいんすね」
私と同じことを思ったのか、安川先輩が声をこぼした。
「もしかして、許可がでたんですか?」
続いて、横田先輩が興味津々な様子で尋ねる。
「……まあね」
ちよ先輩は、少し含みをもたせた返事をした。
「え……まさか」
「ひなたちゃん、早速ちよ先輩の彼女に……?」
——かのじょ。
その響きに、私の心臓がドキリと大げさに反応した。
……いや、いやいや。
彼女じゃ、ないもん。
落ち着こう、私の心臓……。
バクバクと激しく打ちつけているその動きを、なんとか落ち着かせようとしていたけれど。
次にちよ先輩の口から飛び出した言葉に、うっかり破裂してしまうところだった。
「そうだったらよかったんだけど。残念ながら違うよ」
楽しそうに顔をほころばせたちよ先輩は、
「そうだな……。俺は、ひなちゃんの『ボディーガード』ってところかな」
安川先輩たちにそう言い残し、私の手を引きながらその場を後にした。