ちよ先輩のてのひらの上。
「ねえ。……最近のちよ、そらの妹とよく一緒にいるよね」
「ああ……うん」
「——付き合ってるの?」
ゴクリ、と私の喉が鳴った。心臓のドキドキが、さらに速まる。
「違うけど」
「……そ」
「なんで?」
ちよ先輩の問いかけに、彼女が顔を赤らめた。
「……いいじゃん別に。気になったの」
「ふうん」
「ちょ、なにその顔。ムカつく」
ちよ先輩はこちらに背を向けていて、その表情を確認することはできない。
……だけど、なんとなく想像できる。
いじめっ子のような、先輩のイタズラな微笑みを。
女子生徒が悔しそうに、ペシッ、と先輩の腕を叩いた。
「いて」と小さく声を上げたちよ先輩を置いて、さっさと校庭へと駆けて行く。
……仲良しだな……。
同級生という距離感を目の当たりにして、少しだけ気分が落ち込んだ。
今のやりとりを見ただけで、あの女の先輩がちよ先輩に好意を抱いていることは、はっきりと感じ取れた。
それに……。
——もしかしたら、ちよ先輩のほうだって……。