ちよ先輩のてのひらの上。


……。
あの先輩、美人さんだったな……。

長い黒髪を高いところでひとつに括っている、綺麗な横顔を思い浮かべた。

耳の下でふたつに結いた自分の髪を、無意識に指で弄んでいると、その場に残っていたちよ先輩が突然こちらを振り返った。

……わわっ。


サッ、と校舎の影に身を引っ込めた。


……って。だから、どうして隠れちゃうの、私……。これじゃあ、まるで本当に覗き見をしているみたいだ。

……いや、してたんだけど……。


見つからないよう、できるだけ体を小さくしてその場に屈み込む。

けれど、そんな私の努力を嘲笑うかのように、ゆっくりと近づいてきた足音が、すぐ傍で止まった。

ただでさえ薄暗い体育館の入り口に、陽がかげる。


「……ひなちゃん、みっけ」


恐る恐る顔を上げると、……先ほど想像していた通りの、先輩のいじめっ子のような表情が、私を見下ろしていた。

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