ちよ先輩のてのひらの上。
「ちっ、違うんです」
まるで罪を暴かれた犯人のようなセリフを発する。
引きつった笑顔で体育館シューズの入った袋をぎゅう、と胸に抱くと、先輩がくすくすと肩を揺らした。
「まだなにも言ってないよ」
「……」
……覗き見してたの、完全にバレてる……。
叱られる子供のように首を垂れながら、私は大人しく立ち上がった。
「ひなちゃんも体育だったんだ。……ひとり?」
先輩と色違いのジャージを身につけている私は、コクリと頷く。
「上履きに履き替えるのを忘れてて……、戻ってきたところです」
「で、俺たちを見つけて、思わず隠れちゃったんだ?」
「……スミマセン」
ちよ先輩は、再びふっと笑った。
「いや。別に内緒話をしてたわけじゃないし、いいんだけど」