ちよ先輩のてのひらの上。


ちらりと上目遣いに見ると、頬にえくぼを寄せた先輩の笑顔が、私の視線を受け止める。


——あ……。

……眼鏡、してない。
体育だから、外してたのかな。

普段より少し幼いその表情に、胸の内がぽわぽわと温かくなった。


……最近気がついたけど、どうやら私はちよ先輩の笑った顔が好きみたいだ。

先輩が笑ってくれるなら、覗き見をしていた恥ずかしい姿を見られたって、いいやと思えてしまう。


「あ……ごめん。着替えないとなんだから、あんまり引き止めるとご飯食べる時間なくなっちゃうよね」


揃って体育館から出ると、先輩は先ほど女子生徒が去って行った方向を指差した。


「じゃあ、俺こっちだから。また後でね」

「はい」


ペコリと頭を下げて、先輩に背を向ける。


「——そうだ。ひなちゃん」


思い出したように声をかけられ、私は足を止めた。

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