ちよ先輩のてのひらの上。


中学生の頃には、女の子から、プレゼントや手紙などをお兄ちゃんに渡すよう頼まれるのが日常茶飯事だった。

……そして、男の子からは、お兄ちゃんへの妬みをぶつける対象にされ、嫌がらせを受けたりもした。


——もう、あんな学校生活は、絶対に嫌。


なるべくお兄ちゃんの妹だと気づかれないようにして平和な日常を送るんだ。そう心に誓って、今、ここにいる。


……ずっとバレずにいるのは、無理かもしれないけど……。

でも、……せめて、友達ができるまで……。


『結城そらの妹』ではなく、『結城ひなた』の友達ができるまでは、何としても学校でお兄ちゃんに近づかないようにしないと……。


改めて決意を固めた私は、壇上のお兄ちゃんに戦いを挑むような目を向ける。

そんな私の視線に、気づくはずもなく……、お兄ちゃんは結びの言葉を述べると、涼しい顔でおじぎをした。

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