ちよ先輩のてのひらの上。


ガサ、と葉がぶつかり合う音がして、私は思わず振り返った。

見ると、テニスボールがコロコロと転がってきて、勢いをなくし、私の足元で止まった。


「……どうしたの?」


ボールを追いかけるようにやってきたラケットを持った男の子が、私を見て目を丸くする。

そして、足元のボールと見比べて、


「……ごめん!もしかしてボール、ぶつかった?」


私は、弱々しく首を振った。


「……よかった。……じゃあ、どうしたの?どっか、怪我しちゃった?」


もう一度、首を振る。


「……大丈夫?」


よしよしと頭を撫でられ、……それが、まるでお兄ちゃんにされているみたいで、私は余計に泣いてしまった。

慌てた男の子が、どうしたらいいかを私に聞いた。

私は、帰りたい、と言った。

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