ちよ先輩のてのひらの上。


「……なんの話だよ」


お兄ちゃんがジトリとした目を向けてくる。

安川先輩が、伺うように私を見た。


……ダメ。
言っちゃ、ダメ……っ。

すがるような視線を返しながら、心の中で必死に念を送っていると、……いたずらっ子のように、唇を噛んだ笑みが返ってきて——。


「ひなたちゃんの初恋の話っすよ」


私は、思わずぎゅう、と目を瞑った。


——ダメって、言ったのに……。あ、言ってはないや……。


「……ふーん?」


お兄ちゃんの眉毛がピクリと動く。

私は絶対に目を合わせないように、お弁当へと目線を固定した。


「そんなやついたのかよ。……俺は聞いてないけど」

「……ち、違くて……」

「まあ、いいけどな。ひなたももう高校生なんだし」


……あれっ。

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