ちよ先輩のてのひらの上。
降って来た予想外の言葉に、私は顔を上げた。
お兄ちゃんを見上げると、ニコ、と笑顔を向けられる。
私の背中が、ぞくりと震え上がった。
「……そら。目が笑ってないよ」
ちよ先輩が笑いながらやってくる。
置き去りだった購買のパンの横にプリントを置き、席に座った。
「……あ、それ、体育祭のアンケートですか?」
辻村先輩が、上手く話を変えてくれた。アイコンタクトをされ、思わず手を叩きたくなる。
……ナイスですっ。
「うん、そう。職員室に取りに行ってたんだ」
お兄ちゃんもちよ先輩に続いて、腰を下ろした。
その表情は、まだどこか不満げだ。
「……それで?」
ちよ先輩が、私を見る。
あ……。
これ、は……。
その表情が、……やけにイジワルなものだったので、じわりと汗が滲んだ。
「ひなちゃんの初恋の話、……俺も聞きたいな」
「……」
こっそりお兄ちゃんを盗み見ると、ムスッとした様子で、お箸を手に取った。
グサリと唐揚げを刺すその勢いに、私の肩が揺れる。