ちよ先輩のてのひらの上。
もう……。ちよ先輩ってば、わかってて、楽しんでるでしょ……。
抗議の目を向けるも、ん?と首を傾げられてしまった。
——それとも……。
僅かな期待を疼かせながら、私は小さく言った。
「……小学生の頃、泣いてるところを慰めてもらっただけで……。そんなんじゃ、ないんです」
「そうなの?」
ちよ先輩が、……本当に、私に興味を持ってくれてるとしたら……。
それは少し、嬉しいかもしれない。
体育の終わりに、ちよ先輩たちを見て、私が感じたようなモヤモヤとした気持ちを、同じようにちよ先輩も感じてくれたら……。
「まだ、好きとかよくわからないので……」
弱々しく言った私に、安川先輩がぐっと身を乗り出した。
「じゃあ、ひなたちゃん。今、もし会えるとしたら、その男に会ってみたいって思う?」
……私はちよ先輩を盗み見ながら、……コクリと頷いた。
「会いたい、とは思います……」
「ほらあ。やっぱりそれは、初恋でしょ」
「……そうなんですかね……」
えへ、と照れ隠しで笑う。