ちよ先輩のてのひらの上。


……ボールペンの音が、ピタリと止む。

私は先輩のほうを見れずに、机に置かれた体育祭についてのアンケートの束をじっと見つめた。


このアンケートは、生徒の希望をできるだけ叶えるため、生徒会が作成したものだ。

それを、副会長であるちよ先輩が集計している。

一緒に登下校をするようになった今、その作業が終わるのを、ふたりきりの生徒会室で待っているところだった。


「……ひなちゃん」


先輩はペンを置くと、体を傾けて、私の視界に入り込んできた。

覗き込むように向けられた上目遣いに、胸が小さく震える。


「……俺にだけこっそり、昼休みに話してた男の名前、教えてくれない?」

「……え……?」


突然振られた話に、私はきょとんとした。


「ほら。……ひなちゃんの、初恋の相手」

「あ……」

「ダメ?」


じっと見つめられ、……徐々に私の体温が上がっていく。

私は、今度は逆方向に視線を逃した。

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