ちよ先輩のてのひらの上。


「……先輩は気にならないのかと思ってました」

「気になるに決まってるじゃん。……あんな、可愛いこと言われたら」

「……可愛いこと?」

「だってさ。大事にとっておきたいってことは、……今もその男は、ひなちゃんの心の中にいるわけでしょ」


ちよ先輩の綺麗な手のひらが、こちらへと差し出された。

ほっぺに添えられ、くいっと力が加えられる。抵抗する間も無く、私の視線はまっすぐにちよ先輩と交わってしまった。


「俺とふたりでいるっていうのに、……他の男のこと考えてるのかもしれないと思うと、……妬ける」

「……」

「大事にしまってないで、……教えてよ、ひなちゃん」


注がれる先輩の視線に捉えられて、指の先まで体が固まっていくような感覚が襲う。

ドクン、ドクン——と、心臓が大きく波打っていた。

先輩に触れられている部分から、……私の鼓動が伝わってしまっているかもしれない。

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