ちよ先輩のてのひらの上。
——そう思った瞬間、私は、バッとプリントの束を半分手に取った。
先輩が驚いたように、私から手を離す。
ぐるぐるとテンパる頭のまま、私は言った。
「……アンケートを集計するくらいなら、できますからっ……」
逃げこむように、プリントの影に顔を隠す。
「ひなもこっち、手伝いますね」
「……」
「……」
——あ……。
「……私も、こっち手伝いますね……」
萎れた声で、私は言い直した。
プリントの壁の向こう側から、ふっと息が漏れるのが聞こえた。
「……別に、言い直さなくてもいいのに」
「……」
「いいじゃん。自分のことひなって呼ぶの、可愛い」
……最悪……。
もうすっかり、直ってたのに……。
私は、そろりそろりと目だけを覗かせた。
「……子供っぽいじゃないですか」
「そう?」
「……小学生のときは、自分のこと、そう言ってたんです」