ちよ先輩のてのひらの上。
見上げると、いつの間にか隣に移動してきていたちよ先輩が、こちらを見下ろしていた。
「……ど、どうしたんですか」
「ごめん。……ちょっと今の、ムカついたから」
「……え……」
戸惑う私を捕らえたまま、先輩は隣の椅子に腰を下ろした。
「ひなちゃん。……言っとくけど、俺は第2のお兄ちゃんになるつもり、ないからね」
私を眺めたまま頬杖をつくと、すっと目を細める。
「確かにそらの友達だけど、俺は、……男だよ」
手首を掴んでいた手が、ゆっくりと、手のひらへと移っていく。
そのままぎゅ、と指を絡められ、私の顔が一気に紅潮した。
「せ、せんぱい……」
「うん。……なに?」
すり、と手の甲を撫でられる感覚に、ぞくぞくとくすぐったさが背中に走る。
私を眺めたままのちよ先輩の唇が、ゆっくりと弧を描いた。