ちよ先輩のてのひらの上。
「——俺と、比べてるの?」
繋がった先輩の手が、かすかに緩んだ。
私を隠していた髪に、先輩の指がそっと触れ、そのまま耳にかけられる。
「……先輩は……」
明るくなった視界に、とうとうぽろりと涙がこぼれた。
「先輩は、……今までに付き合った女の子が、いるじゃないですか……」
「……」
「私なんて、恋かどうかもわからない、小さい頃の思い出しか知らないのに……。そんなの、ズルいじゃないですか……」
自分でも、滅茶苦茶なことを言っているとわかっていた。
けれど、頭と口が切り離されたみたいに、勝手に言葉が飛び出していく。
私は、泣きながら自嘲じみた笑いを作った。
「……先輩といると……知らないことだらけな自分が、恥ずかしい……」