目が合った、理由
「え〜じゃあ次坂下ー」
先生の予想外の声で、一気に現実に引き戻された。
ちゃんと聞いてないときにかぎって指名されたりするから、油断出来ない。
「えっ次って、えっと章Bの問2ですよね?」
慌ててノートをめくる私。
大丈夫、大丈夫…確か昨日解いていたはず…

急いで当てられた問題を答えようとする私をよそに、なんだかクラスメイトの様子がおかしい。な、なんだろ?

「おいおい、そこは明日するところだぞー?予習は偉いが授業もちゃんと聞いとけー」

やれやれと呆れた先生と、「どんまーい!」と優しいクラスメイトの対応に、逆にいたたまれなくなって、更に縮こまる私。
昨日、必死に夜中までかかって解いたのに…

「じゃあ代わりに柴崎なー」
「嘘やん⁉︎俺この前の小テスト3点だったんだけど!!」
「いや、知ってるわ。だからこそだよ。少しは勉強しろ!いつまで先生はお前に算数を教えなきゃいけないんだよ」

いや算数て!というツッコミが飛び出し、
先生と柴崎君のまるで漫談のような会話に
クラス中が笑いに包まれる。

みんなはもう違う話題に移っているのに、顔の火照りはまだ収まらないままだ。

こんなかっこ悪い所、見せたく無いのに。
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