目が合った、理由
ドジでいつも空回りしている私は、
片想い中の司くんに一度も話しかけたことがない。

ましてや、こんな失敗を繰り返しているようじゃ、完璧な司君の彼女なんか夢の夢のそのまた更に夢だろう。

今日も今日とてかっこ悪い所を晒してしまった私は、恐る恐る顔を上げて視線を確認する。

流石にみんな興味を失っているだろう。柴崎君の活躍のおかげで私の失敗なんか覚えてて無いはず…

そうは言いつつ、正直私が確認したいのは一人しかいない。

私は、司君の席の方を確認しようと顔を傾けた。





瞬間、君と視線がぶつかる。






司君は、クラスの喧騒のなかで、一人だけこちらを見つめていた。

頬杖をついて、特に笑うこともなく、静かに。


呼吸が、思わず止まりそうになる。

早くなる心臓の鼓動を必死に抑えながら、顔に出ないように平静を装う。
視線はまだ私を捉えたままだ。

こういうことは、実は初めてでは無い。

ふとした瞬間、主に私がやらかしたときなどに司君の方を見ると、目が合うことがあるのだ。

馬鹿にしている訳でもなく、冷やかすような視線でも無いため、真意が読み取れずに、なんだか勝手に緊張してしまう。


今日も、君の視界に入ることが出来た。


失敗を見られた恥ずかしさと、目が合った嬉しさが入り混じって、微妙な顔になってしまう。

うう、今の私変な顔してないかな?





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