甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
――――九条先生…って、悠さんのこと、だよね?
お見合いって何のこと?
女医の彼女って、佐々木さんはもう別の病院に移ってるんだよね?
私はダメだと思いつつも、隣の会話に耳をそばだてる。
「でも結局美人女医を選んでる時点でね」
「あはは!それはアンタの僻みでしょ!」
「なによー」
彼女達の口からそれ以上悠さんの話は出てこず、ひとしきり話して飲み物を飲み終わると、すくっと立ち上がって病棟の方へ歩いていった。
取り残された私は、固まったままその場から動くことが出来なかった。
病院内で噂になるほど、悠さんはお見合いを勧められているんだろうか。それとも、さっきの看護師さんが情報通なだけ?
佐々木さんの綺麗で自信に満ちた顔が脳裏に浮かび、私は1人勝手に暗い気持ちになる。
そんな自分を叱責するように、ブンブンと頭を左右に振った。
悠さんは私に佐々木さんのことをきちんと話してくれた。何も心配することはないはず。
それに、せっかく約1ヶ月ぶりにゆっくり会えるのに暗い顔をしていたくない。早く悠さんの顔が見たいし、楽しい時間にしたい。
気を取り直して大きく深呼吸をしていると、手にしていたスマホが電話の受信を告げていた。