甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

勝手知ったると言った感じでエントランスホールに入る佐々木さんは、私の顔見知りのコンシェルジュが「お帰りなさいませ」と言うのを素通りして、奥にあるソファに腰を下ろした。

「あなたも座れば?悠が帰ってくるまでどうせここで待つんでしょう?」
「いえ、私は……」

ここで彼女と2人仲良く悠さんを待つなんて息が詰まってしまう。

かと言って、彼女を放置して部屋に上がっていくのも躊躇われた。

「…あなたまさか、ここの鍵を貰ってるの?」

不機嫌そうに顔を歪めた佐々木さんに睨まれ、私はつい俯いてしまう。

それを肯定ととった彼女は、ガタンと大きな音を立ててソファから立ち上がった。

「合鍵を貰ったくらいであまり調子に乗らないことね。あなたはただの家事手伝い。悠は私と結婚するのよ!」
「……け、っこん………?」

咄嗟に意味が分からなくて聞き返したのが癇に障ったのか、佐々木さんは「あり得ないとでも言いたいの?!」と私に詰め寄ってきた。
距離が近付いたせいで、以前感じたことのある薔薇の甘い香りに胸が焼け付く。

「悠ほどの人間があなたみたいな子供に真剣になるとでも思ってるの?彼は優秀な医師で、将来を約束された立場の人間なのよ」
「将来を約束された立場…?」

留学をしていたくらいだから優秀な医師なんだろうということはわかる。でも、将来を約束されているというのは一体…?


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