甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
その背中が見えなくなるまで見送ると、身体の力が抜けてヘナヘナとその場にしゃがみ込む。
心身ともに緊張状態だったせいで動悸と汗が凄い。なんとか大きく深呼吸しながら平常心を取り戻そうとしていると、コンシェルジュの男性が足早に駆け寄ってきてくれた。
「大丈夫ですか?」
「あ、すみません。なんでもないんです」
もしかしたらコンシェルジュカウンターにまで私達の会話が届いていただろうか。そうだとしたら恥ずかしくて顔が上げられない。
しかし長年この仕事を務めているであろう男性は、私に何も悟らせないような鉄壁の微笑みで「お部屋まで荷物をお持ちします」とだけ言ってくれた。
その気遣いがありがたくて、私は素直にお礼を言ってスーパーの袋を1つ持ってもらった。
悠さんの部屋につくと、すぐに料理に取り掛かった。
お米を洗って炊飯器にセットし、買ってきた食材をキッチンに並べる。
鍋に沸かしたお湯で豚肉を茹で、みじん切りにしたネギと塩と胡麻油などで作ったタレを掛ける。
小松菜はサッと茹でて叩いた梅と鰹節をめんつゆと一緒に和えた。
鯵の開きを焼いて身をほぐし、生姜やニラと一緒に濃いめに味付けをする。あとで炊きあがったご飯に混ぜれば完成だ。