甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
彼女が言っていたことのひとつが真実であるということ。それが私の心に黒い染みを落とす。
もしかしたら、他のこともすべて真実なんじゃないか…。そんな疑念が過ぎってしまう。
頭では悠さんを信じようと思っているはずなのに、心のどこかで『どうして言ってくれなかったんだろう』と彼を責めている自分がいる。
お見合いの話があることも、彼の父親が私の働いている職場の大元の理事長であることも、どうして私は本人からでなく他人から知らされなくてはならなかったんだろう。
きっと悠さん本人から聞いた所で、私はお見合い相手と自分を比較して落ち込むし、彼の父親の偉大さに恐縮して彼との交際に消極的になっただろう。
そんな私をわかってくれているからこそ、悠さんは敢えて言わなかっただけかもしれない。
私以上に私のことを考えてくれる優しい人だから。
そうわかっているはずなのに、どうして心のモヤモヤが晴れないんだろう……。
炊きあがったご飯に味付けした鯵と薬味を混ぜ、すべての料理が完成しても悠さんは帰って来ない。
時計を見ると18時を回っている。そろそろ仕事も終わる頃だろうか。
彼の仕事の終わりの時間が見えないなんていつもの事なのに、なぜか今日は不安に胸が騒ぐ。
間違いなく彼女に会ってしまったのが原因ではあるけれど、どうしても心を落ち着けることが出来ない。
早く会いたい。顔が見たい。抱きしめて貰って『遥だけだよ』と言葉にして聞きたい。
ワガママだとわかってはいるけど、私は少しでも早く自分の欲求を満たしたくて、悠さんの病院まで彼を迎えに行くことにした。