甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

病院まで歩いて10分の場所にあるマンションは通勤にはもってこいだと悠さんが言っていた。

留学前の研修医時代もこの一橋総合病院で働いていたらしく、ここが都内で1番循環器系の病気に強いらしい。

尊敬する先生がたくさんいるこの病院で働けるのが誇りなんだと、悠さんは少し照れくさそうに話してくれたことがあった。

驚くことに、クマ先生は以前この一橋総合病院の循環器系外科の部長を務めていたらしい。悠さんの研修医時代は、とてもお世話になったそう。
そして、今も籍は一橋総合病院にあるという。

『泣く子も黙る鬼の熊澤って、大学時代から名前は知ってたよ』

私の知るクマ先生からは想像もできない二つ名に驚いた。
それをクマ先生に聞くと『むかーしむかしの話だよ』と童話を話すような口調で笑っていた。

『大病院の外科部長を辞めて健診に力を入れてるのは、遥ちゃんと一緒の理由だよ。いつかお母さんのことを話してくれたでしょう。僕もね、妻を胃癌で亡くしているんだ』

1番身近な奥さんの体調に気付かないほど忙しかった外科部長の職を辞し、今は健診業務に注力しているそう。

切ないけれど、そんなクマ先生を素敵だと思ったし、もっともっと先生が大好きになった。

そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に病院の中庭についた。


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