甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

18時半、陽が落ちてあたりは薄暗い。
ベンチには人はおらず、セミの声だけが響いている。

確か中に喫茶店や売店もあると言っていたし、そっちで待とうと病院内へ向かった。

夕方のたかが10分とはいえ真夏に外を歩くとやはり暑くて、お茶を買おうと売店へ入る。小さなイートインスペースに座って買ったばかりの冷たいペットボトルのお茶で喉を潤していると、隣のテーブルに座っていた女性3人組の声が耳に届いた。

「え、じゃあやっぱりまだ付き合ってたってこと?」
「私聞いちゃったもん、九条先生と佐々木先生が2人で話してるの」


―――九条先生と佐々木先生が、2人で……?


飛び込んできた情報に頭が追いつかないまま、新たな情報が追加されていく。

「九条先生が『父に言っておく』って言ってて、佐々木先生も『早めによろしくね』なんて甘えた声でさぁ。あれは結婚前の挨拶の話でしょ、きっと」
「えぇ?でも移った病院の御曹司とデキてるって話じゃなかった?」
「こっちに会いに来てるってことは切れてなかったってことでしょ。あんまり盗み聞きしてるのもアレだから一旦離れたんだけど」


――――結婚前の、挨拶…?

2度と会わないと言っていたのに、本当はこの病院で2人で会って話をしていたってこと……?
マンションのエントランスで自信満々に話していた彼女の顔が脳裏にこびりついて離れない。


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