甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
極めつけは、熊澤先生の弟である信さんの店での会話。
サラサラの黒髪を解いた隙間から見えた耳を飾るイヤリングに、思わず手を伸ばした。
彼女はピアスを開けると運命が変わるという迷信を信じ、ピアスの穴を開けていないという。
『はい。『この人になら運命を変えられてもいい』って思えた人に、ピアスを開けてもらおうって』
『あ、あと身体に穴開けるんだからきっと痛いですよね。だから『この人から与えられる痛みなら受け入れられる』って信頼できる人じゃないと開けられないかも』
純真な瞳をしてそんなことを言う遥。その大きな瞳いっぱいに涙を浮かべるのを見ながら、震える耳にピアスホールを開ける自分を想像し、思わず噎せてしまった。
ニヤニヤしていた信さんにはきっと何を考えていたのか読まれていたに違いない。
遥に今は恋人がいないことを知り、さらに元彼がダメ男だといういらぬ嫉妬を呼び起こす情報まで知ってしまったが、俄然彼女を自分のものにしたいという欲が湧き上がった。
その日のうちに休日に2人で会う約束を取り付け、前日には遥に似合いそうなピアスを買った。
自分の独占欲に苦い笑いが漏れる。ねだられてもいないのに、自分から女性にアクセサリーをプレゼントするなんて初めての経験だった。
しかし初デートに漕ぎ着けたものの、結局ピアスは渡せず終い。
今は俺の車の助手席に乗っている『ウニ』という名前のなんとも形容し難い顔をしたぬいぐるみが、遥を見たこともないほどのハイテンションにさせてしまったのだ。