甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
地下駐車場で愛車に乗り込み、遥の家へ向かう。
信号が赤になるたびに電話を掛けるが、何度目かには繋がらなくなってしまった。
電源が落ちてしまったのか、あるいは……。
ハンドルを握る手にじわりと汗が滲む。
しかし、こんな事態になる心当たりはひとつもなかった。
一体どうして遥は急に俺の部屋からいなくなってしまったのか。
遥のマンションの近くのパーキングに車を停め、聞いていた彼女の部屋まで階段を駆け上る。
コンシェルジュどころかオートロックもないこのマンションではセキュリティが心配で、いつか自分のマンションに引っ越しておいでと誘うつもりでいたのを思い出した。
304号室の扉の前につくと、大きく息を吐き出してからインターホンを押す。
パタパタと小さなスリッパの足音と共に「はぁい」とか細い遥の声。
やはり家に帰ってきていたのか。
彼女が無事なことにホッとしつつも、なぜ連絡もしないで帰ってしまったのかと疑念が湧く。
「遥」
ドア越しに呼びかけると、扉1枚挟んだ向こう側でドアスコープを覗いたのか、ハッと息を飲んだのがわかった。