甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「遥、開けてくれる?」
「……ごめんなさい。帰って下さい」
――――何だって……?
温度も抑揚もない声音で紡がれた思いも寄らない遥の言葉に、咄嗟に反応が遅れた。鈍器で頭を殴られたような衝撃が走る。
彼女が連絡も無視して顔も見ずに帰れだなんて、あきらかにいつもの様子と違う。
「どうして…?具合でも悪い?」
まさか帰れと言われるとは思わずに、ショックで呆然とした声で問い掛けたが、答えは返ってこない。
扉の向こうで息を詰めている遥の気配がする。じわりと額に汗が滲んだ。
呆けている場合ではない。なぜこんなことになっているのか全くわからないが、何とか遥に食い下がる。
「遥、どうして何も言わずに帰ってきたの?何があったのか話してくれないか?」
「……悠さんは…」
「え?」
ドア越しに話しているせいで、小声だと聞き取りづらい。
遥の言葉を何一つ取りこぼしたくなくて、必死に耳を傾ける。