甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「……悠さんこそ、私に…何か話さないといけないこと、ありませんか……?」
初めて聞く、遥の何か咎めるような尖った声。それでいて、泣くのを堪えているかのような浅い呼吸も聞こえてきて、胸が潰れる程痛む。
泣かせたくない。
母親を亡くしてから、1人健気に頑張ってきた彼女を甘やかしてやりたい。
そう思って遥に接してきたつもりなのに、なぜ今彼女は1人で泣いているのか。
『私に…何か話さないといけないこと、ありませんか……?』
遥の問い掛けを頭で反芻し、何度も考える。
話さなくてはならないこと…?
一体なんだろうと考えを巡らせる。
すぐに思いついたのは遥も1度会ってしまった佐々木麗子の存在だが、彼女の件は既に父にも話して解決済みで、2度と遥に嫌な思いをさせることはないだろう。
熊澤先生から何か俺のことについてあることないこと聞かされたとか?
例えそうだとしても、遥が真偽も確かめずに今のような態度を取るとも思えない。
全く心当たりがなく、焦りと暑さから首筋を流れる汗を手で拭い、小さくため息を吐いた。