甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
「…っ、帰って…」
「遥」
「帰って下さい」
なぜだ。
何が遥をこんなに頑なに追い詰めてしまったのか。
その原因が自分にあるのならすぐに謝るし、直せるものなら改善するよう最大限努める覚悟もある。
でもその心当たりもなければ、彼女は話してくれず『帰って』と繰り返すばかり。
俺の家に完成した料理があったということは、少なくともその時は俺と過ごす時間を楽しみにしてくれていたはずだ。
料理をしたあと、一体遥に何があったんだ……。
「遥、お願いだ。何があったか話して欲しい」
「私は…今、…話したくありません」
「遥!」
「帰って…!お願い、1人にして……」
困惑と焦燥に、ついここがマンションの部屋の外だということも忘れて大声で遥を呼ぶと、それ以上に大きな声の悲痛な叫びが胸に刺さる。
その声音はあきらかに涙に濡れていて、そんな遥を抱き締めることも出来ない自分が歯痒くて仕方ない。