甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

翌日の日曜日も悠さんは家へ来てくれたけど、私は1度も扉を開けることなく、ベッドに潜り込んで彼の声が届かないよう必死に現実を遮断した。

『遥、どうして何も言わずに帰ってきたの?何があったのか話してくれないか?』
『遥、お願いだ。何があったか話して欲しい』
『愛してる、遥。何があっても、ずっと』

幾度も紡がれる言葉に縋りたくなるたびに、私には語られなかった事実が鋭い牙を向いて心を抉る。

なぜあの人と会っていたの。
あの人を健康推進会の理事長であるお父さんに紹介するの?
私はふさわしくないから、あの人と結婚するの…?

悠さんから何も聞かされていなかったことを、2度と会わないと言っていたはずの元カノである佐々木さんから告げられたこと。
悠さんと佐々木さんの結婚話が彼の職場の病院でまことしやかに噂になっていること。

そのことが、私を頑なに悠さんとの話し合いを拒絶させていた。

悠さんとお付き合いを始めてまだ日は浅い。
でも幸せだった。
確かに彼は職業柄忙しくて頻繁に会えるわけではなかったけど、少しでも時間が出来れば連絡をくれたし、休日は他の用事よりも私と会う時間を優先してくれていた。

両親を亡くし甘えることが下手な私を見抜いて、会えば過保護なほど甘やかしてくれた。
大事にされていると思っていた。

でもそれは、私の勘違いだったんだろうか。あんなにも幸せだと感じていた日々は一体何だったの…?


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