甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています
『遥とは遊びだった』
『相応しい相手と結婚しなくてはいけなくなった』
そんな残酷な言葉を聞きたくなくて、ただ彼に会わないように逃げるしか出来なかったこの1週間。
悠さんから毎日掛かってくる電話にも出ず、メッセージに至っては読んでさえいなかった。
「遥…」
何も言わず、抱き締め返すことも、離してと振りほどくこともしない私に、悠さんは困惑しつつも優しい瞳を向けてくる。
「突然家まで来てごめん。でも、どうしても遥が俺に会いたくないという理由がわからなかった」
「……」
「お願いだ、話をしてほしい。君をこのまま失うなんて耐えられない」
悠さんの真剣な眼差しと懇願するような言葉に、私の心はグラリと揺れる。
「…お仕事は?」
「大丈夫。比較的落ち着いてるし、引き継ぎもちゃんとしてから来た」
それでもきっと忙しい合間を縫ってここまで来てくれたのに違いない。
遊ばれていたにしろ、彼が他の誰かと結婚するにしろ、このままではいけない。あのマンションの鍵だって返さなくては。
「…ここだと、近所迷惑になってしまうので」
私は鞄からウニのキーホルダーのついた鍵を取り出し、悠さんを自宅へ招き入れた。